サイトへの御訪問、誠にありがとうございます。近年逆流性食道炎は若者に増加しているようです。
呑酸どんさんや胸焼けでつらい日々は一日も早く脱したいものですね。

逆食、逆流性食道炎の症状から原因、治療、お薬、手術までの詳細をわかりやすく、専門医に

執筆してもらいましたのでぜひ、ご参考にされて1日も早く快方に向かっていただくことを願います。

この記事の監修医師は以下の通りです。

 

大河内 昌弘(おおこうち内科クリニック院長)

 

 

 

 

<はじめに、逆流性食道炎とは>

 

逆流性食道炎とは

 

逆流性食道炎とは胃食道逆流症(Gastro Esophageal Reflux Disease ; GERD)という疾患群に包含されている疾患です。GERDには胃食道逆流症の他に非びらん性胃食道逆流症(Non-Erosive Reflux Disease ; NERD)とバレット食道という疾患があります。

 

逆流性食道炎は胃酸が胃から食道に逆流し、酸が食道の粘膜を傷害する疾患です。

 

一方、NERDは胃酸の逆流は逆流性食道炎同様に認められるものの、上部消化管内視鏡で食道を見ても粘膜の障害がない疾患です。内視鏡だけ見れば一見正常粘膜にみえるものの、患者さんは胸やけや吞酸を訴えます。NERDに関しては粘膜障害がないのに症状を呈することから、NERDの患者さんの食道は胃酸に対する反応性が亢進しているのではないかと考えられています。

 

また、バレット食道は胃酸によって何度も食道粘膜が障害され、何度も再生を繰り返しているうちに本来の食道の上皮、つまり重層扁平上皮に再生できなくなり、円柱上皮という上皮になってしまう疾患です。円柱上皮は胃酸に対する抵抗性が重層扁平上皮よりもあるので、繰り返す胃酸の逆流により化生(細胞の形態が変化)すると考えられています。このような細胞のリモデリングを繰り返すということは、それだけDNAへの損傷が起きやすいということもあり、バレット食道は前癌病変であるとされています。

 

ただ胃酸が逆流して不快感が生じるだけであればまだよいですが、GERDは食道がんのリスクにもなっていることを理解することが重要です。今回はGERDの中でも、特に逆流性食道炎に焦点を当てて解説していきます。

 

逆流性食道炎の疫学

 

最近の疫学研究において、逆流性食道炎の有病率は10%前後と推定されています。また、逆流性食道炎は増加傾向にあります。

 

逆流性食道炎と体重との関連を調べた研究もあります。肥満度をあらわす指標としてBMI(Bodi Mass Index)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。身長と体重から算出される数字で、一般的にBMIが25をこえると肥満と判断されます。

 

このBMIが逆流性食道炎と関連するかを調べた研究では、BMIが高い肥満群は対象群と比較して有意に有病率が高いというデータが多く報告されています。太っているとおなかの圧力が強く、逆流しやすくなるのかもしれません。また、面白いことに、同じGERDのNERDではこのような結果は得られず、現在逆流性食道炎のみBMIとの関連が認めらてれています。

逆流性食道炎の症状

 

逆流性食道炎の症状には胃酸の逆流が原因となって引き起こされる定型的症状と、それ以外の非定型的症状の2パターンが存在しています。

 

定型的症状 : 胸やけ・吞酸{*}

非定型的症状:胸痛・咳嗽・喘鳴・のどの違和感・耳痛・声のかすれ

(*吞酸とは苦みを伴う酸っぱい味覚のことです。)

 

定型的症状の胸やけや吞酸は食後、夜間、前屈の体勢の時によくみられることが分かっています。ただし、症状の感じ方には個人差があり、粘膜の障害があるのに症状が出ない無症候性の逆流性食道炎もあるため、注意が必要です。

逆流性食道炎の原因

 

症状の原因は逆流した胃酸が食道粘膜を刺激し、傷害することにあります。食道の粘膜を構成している重層扁平上皮は摩擦の様な刺激には強くできていますが胃酸に対しては弱く、胃酸に曝露されると容易に炎症を起こしてしまいます。

 

胃酸が逆流する主な原因に下部食道括約筋(LES)という胃内容物逆流防止機構の破たんがあげられます。

 

※食道の下部には、括約筋(かつやくきん)という筋肉があり、そこが収縮することによって食べ物が逆流しないように塞ぐ機構が働くようになっています。人間の体にはいろいろな括約筋がありますが、たとえば排便を我慢する筋肉が肛門括約筋、排尿を我慢する筋肉が尿道括約筋といいます。このようにきゅっとしめる筋肉のことを医学的に括約筋といい、下部食道括約筋の収縮している圧力のことをLESと言うのです。

 

病態 主な原因
LES圧の低下 食道裂孔ヘルニア
大食
加齢
胃切除術
胃酸の分泌亢進 Zollinger-Ellison症候群
H.pylori感染率の低下
食道運動の低下 強皮症
糖尿病
唾液分泌の低下 シェーグレン症候群

 

LES圧の低下が主な原因にはなりますが、その他にも胃酸の分泌亢進や食道運動の低下、唾液分泌の低下も逆流性食道炎の原因になることがあります。

 

補足:食道裂孔ヘルニアの原因の一つに姿勢の悪さがあげられます。前傾姿勢を長くとり続けていると脊椎が変形し、前屈姿勢につねになるようになってしまいます。町でお婆さんやお爺さんが前かがみになって歩いているときの様な姿勢です。脊椎が変形して前屈姿勢になると、腹圧の上昇につながり、食道裂孔ヘルニアを誘発する可能性があります。

<逆流性食道炎の食事のとり方>

 

胃酸の逆流を起こしやすい食べ物を食べないようにするのが第一の予防になります。脂肪やタンパク質の多い食事は胃酸の逆流を起こしやすいことが分かっています。そのほか、甘いものや唐辛子をはじめとする香辛料の類、レモンなどの酸味が強い食べ物は胸やけの症状を増強させる恐れがありますので、なるべく摂取するのを控えた方がよいでしょう。また、コーヒーやアルコールは胃酸の分泌を増やすだけでなく、胃内容物の逆流防止機構である下部食道括約筋を弛緩させることがあります。

 

野菜や果物など食物繊維を豊富に含む食材は腸内環境を整えると同時にそれらの消化にはさほど時間がかからず消化管への負担も最小限に済みます。意識して食事に取り入れるのが望ましいでしょう。

 

食べる量や方法、タイミングも重要です。一度にたくさん食べすぎると消化管の許容範囲を超えた分が逆流しやすくなるので、腹八分目にとどめておきましょう。また、就寝前に食事をするのも控えましょう。食べ物が十分に消化されず、胃の中に残っている状態で横向きになると胃内容物が食道へと逆流してしまいます。食べる際はよく噛み、消化管への負担を軽減しましょう。小さくかみ砕かれた食塊は大きなものと比較して消化にかかる時間が短くすみます。

 

<逆流性食道炎の治療>

 

逆流性食道炎の治療には生活指導と薬物療法、それらが奏功しなかった場合の外科的治療の3種類があります。

 

①生活指導に関して

 

食事療法以外ですと、肥満の改善が逆流性食道炎の治療として重要です。LES圧の低下の原因のひとつに食道裂孔ヘルニアを挙げましたが、これが肥満と密接な関連があるため、肥満を改善することで逆流性食道炎の改善につながるのです。

 

食道裂孔ヘルニアとは、本来横隔膜が本来ヒトの胸腔と腹腔を隔てていて、胸腔の方に胃が滑脱しないように抑えてくれていますが、肥満などの何からの原因によって腹腔内圧が上昇すると胃が横隔膜から滑脱して胸腔の方へ出ていくことがあります。これが食道裂孔ヘルニアです。

 

食道裂孔とは食道が横隔膜を貫いている穴のことで、ヘルニアとは何かが滑脱して出ていくことを指しています。食道裂孔ヘルニアにより胃が上方へと滑脱するとLES圧が低下してしまい、胃内容物の逆流を引き起こします。そのため、肥満を解消することは二次的な逆流性食道炎を予防することにつながるのです。

 

この他、薬剤的な予防方法もあります。高血圧の薬や睡眠薬などの中にはLES圧を低下させる薬物がありますので、場合によっては薬物の変更・中止を検討します。ただし、治療効果とのバランスを見ながら決める必要がありますので、かかっているお医者さんと相談の上で決定し、自己判断で薬の服用を中止しないようにしてください。

②薬物療法

 

胃酸の作用を弱めるためには最も効果の強いタイプの薬であり、胃潰瘍の治療や抗血小板薬による胃潰瘍予防においてよく使用されています。PPIの投与で逆流性食道炎の90%以上の例で改善が見られています。

 

他に胃酸を抑えるタイプの薬としては、H2ブロッカーがあります。これも、胃酸の壁細胞に働いて、ヒスタミンH2受容体をブロックすることで、胃酸分泌を促進する刺激が入らないようにして胃酸を抑える薬です。

 

消化管運動改善薬はその名の通り消化管の動きを良くして、胃から十二指腸へ食べたものを素早く移行させることによって逆流を防ぐ目的で用いられます。主な薬剤はモサプリドというお薬です。

 

制酸薬は水酸化アルミニウムゲルや水酸化マグネシウムなどで、これらの投与によって胃酸を中和する効果を期待します。

 

③内視鏡的治療、外科的治療

 

薬物療法や生活指導のみで症状が改善しなかった場合、内視鏡的治療や外科的治療などを考慮します。

 

たとえば内視鏡で食道から胃に入る入り口である噴門(ふんもん)の粘膜を切除することで、物理的に縮めて、逆流を起こしづらくするものや、食道裂孔ヘルニアを合併している場合は、外科的治療として裂孔のある横隔膜を縫合して縮める手術(噴門形成術)などがあります。最近では慣れた施設であれば鏡視下手術も行える場合もあります。

 

外科的治療である噴門形成術は、簡単に言えば胃の上部を食道に巻き付けるということを行います。よく行われる術式としてはNissen法(全周性噴門形成術)とToupet法(非全修正噴門形成術)などがあります。それぞれメリットとデメリットがありますが、巻き付ける部分が多いと逆流防止効果は高くなり、反対に術後に嚥下困難(飲み込みづらさ)が出ることがあります。報告によっては、どちらの方法も逆流防止効果は同程度としている場合もあります。

 

その他に治療において見られる合併症としては、特に消化管の手術では縫合不全が怖いところです。消化液が体内に漏れてしまうと、激しい炎症が起きてしまうためです。内視鏡手術では反対に消化管穿孔が起きてしまうことがあります。また、術後に飲み込みづらさが出ることや、術中に気道に管を入れる影響などによって肺炎を起こしてしまうこともあります。また、手術一般的に、皮膚切開の傷が感染したり、心筋梗塞・脳梗塞・肺梗塞などが起こったりすることもあります。

 

食道の手術は外科領域の中でも難しい分野であり、投薬治療で改善する見込みのない方に行うものです。また、きちんとリスクに納得した上で治療を受けることが大切なことは言うまでもありません。

引用元:https://medicalnote.jp/contents/151124-000050-DHCBGN

<妊娠中の逆流性食道炎とは>

 

妊娠中に逆流性食道炎を発症するのはホルモンバランスの変化やストレスなど様々な理由がありますが、主な理由はお腹が大きくなることによる腹圧の上昇が挙げられます。肥満の人と同じように、腹圧が上昇することによって胃酸の逆流を誘発する場合があります。また、つわりの際に嘔吐を繰り返してしまうと胃酸の逆流と同様に食道粘膜が長い時間胃酸にさらされることになるので、粘膜を傷害し、逆流性食道炎の症状を呈するケースがあります。

 

逆流性食道炎の症状自体はお腹がある程度大きくなってから発症するので、妊娠12~16週でつわりが落ち着く時期を過ぎた後でもまだ胸やけや吐き気が続くようであれば一度受診するのが良いかと思います。つわりが長く続いているだけだと思って受診しない方もいらっしゃいますが、症状がひどくて食事が取れなかったり睡眠が十分にとれなかったりと、自分だけではなくお腹の赤ちゃんにも影響が及ぶので甘く見すぎないようにしてください。

 

妊婦さんの場合、飲む薬に敏感になりますよね。基本的には医師と相談の上で治療方針を決定しますが、生活習慣の改善や姿勢の改善など、薬に頼らない形にでも逆流性食道炎は治療できる可能性があります。

<逆流性食道炎におすすめの寝る向き>

 

寝る時は上半身を少し挙上して寝ることで物理的に胃酸の逆流を防ぐことができます。また、左半身を下にして寝るのが良いです。胃の形を想像してみていただけるとわかるかと思いますが、胃の出口は胃に対して右側にありますので、左半身を下にして寝ることによって胃の出口を上に保つことができ、胃酸の逆流を防止することができます。病院のように挙上できないベッドの場合はクッションやマットレスなどを駆使して自分が寝やすい体勢を見つけるのが良いでしょう。

(参照:https://ameblo.jp/allergie-therapist/entry-12045969481.html

 

 

<まとめ>

 

逆流性食道炎は肥満や妊娠など、生活習慣を基盤とした疾患です。治療の欄でも挙げましたが、生活習慣の改善だけで逆流性食道炎は治療を行うことができます。とはいっても、場合によっては治療を行うことが必要になりますので、胸やけや吞酸、つわりを感じたら受診をお勧めします。医師と相談の上で薬物療法を行う場合もありますし、生活習慣を改善することだけで簡単に治る場合もあります。出産を終えたら今までの症状が嘘のように消えるケースもありますので、個人のケースによって適切な治療を行うことが重要であると言えます。

 

 

この記事の監修医師

 

この記事の監修は

大河内 昌弘(おおこうち内科クリニック院長)

プロフィール:
大河内 昌弘(おおこうち内科クリニック院長)

おおこうち内科クリニック院長
総合内科専門医
平成2年3月名古屋市立大学医学部卒業。
名古屋市立大学病院、愛知県公立尾陽病院で内科医として勤務した後、アメリカルイジアナ州立大学生理学教室に留学。
その後、厚生連尾西病院内分泌代謝科部長、名古屋市立大学消化器代謝内科学 臨床准教授を経て、平成24年10月におおこうち内科クリニック開業。http://www.okochi-cl.com/